エマオに向かって

「ところで、ちょうどこの日、弟子たちのうちの二人が、エマオという村に向かっていた。」ルカ24:13

私の信仰とその経緯 #1

はじめに

洗礼を受けてから7年という月日が経ち、今もう一度、私は自分の信仰とそこに至った経緯とを見つめ直し、ここに試練と恵みに満ちた「私の救いの物語」を、初めから丁寧に、順序立てて書き記したいと思うようになりました。

 

そう思ったのは、第一に、いま私自身が信仰の岐路に立たされており、私の人生のうちに働かれる神が、私に何を望んでおられるかを見極める必要にかられているからです。また、第二に、これから私のことを知る人々に、普通とは少し違う道を辿ってきた私のことをよく知っていただきたいと思うからです。そして、最後に、すでに私のことを知ってくれている友人たちに、何一つごまかさず、何一つ省略せず、私の救いの証を書き伝えたいと考えたからです。

 

第1部 摂理

1. 生い立ち、家族

私は、ノンクリスチャンの両親のもとに生まれました。

両親は、共働きで私と妹に不自由のない生活を与えてくれました。しかし一方で、小さい頃、両親と一緒にいる時間は決して多くはありませんでした。というのも、朝〜夕方は保育園に預けられ、夕方〜夜まではベビシッターさんのお宅に預けられていたからです。

小学生の頃、私と妹が一番恐れていたことは両親の喧嘩でした。本当に夫婦喧嘩の絶えない家でした。夜になると決まって言い争いが始まるので、私たち兄妹は寝室に逃げ込んで、終わるまで布団にくるまって、ずっと耳を塞いでいました。

 

このような幼少期の体験は、「愛に対する強い飢餓感」となって、その後の私の人生に大きな影響を与えていくことになります。

 

2. タラント

私には好きなことがありました。それが、小学6年生の頃から始めた英語の勉強でした。そもそも私は何かを学ぶことが好きで、好奇心旺盛な子どもでした。英語に出会うまで、私の興味関心は主にブラックホール素数、それにプログラミングといった理系分野に向いていたのですが、そちらには才能がなかったようです。しかし、英語は何か「噛み合った」という感覚がありました。

英語という未知の言語に魅了され、夢中になって勉強しました。学校の授業を完全に無視して、我が道をひた走り、気づけば高校1年生で英検準1級というところまで来ます。

 

いつしか私の夢は「海外の大学で勉強すること」になりました。ただ”英語を勉強する”だけでなく、”英語で何かを学びたい”と思うようになったからです。

 

しかし、道のりは困難でした。一般に海外の大学に進学するためには、TOEFLやIELTSといった4技能試験で、相当な高得点(TOEFLであれば120点中60〜80点)をとる必要があり、それは英検準1級よりも遥かに高い目標であり、独学でそこまでいった日本人は私の知る限り皆無です。

ただ、それよりもさらに大きな問題がありました。それは学費です。たとえば、アメリカの私立大学に行く場合、4年間の学費は1200万円を超えてきます。これは一般的な家庭には、まず出せない額でしょう。

 

そういうわけで、私はこの夢を諦めるしかありませんでした。それでも私は、それまで全てを注いで英語を勉強してきた、ということもあり、どうしても諦めがつきませんでした。両親とは何度もぶつかり、その度に「無理だ」「無理だ」と言われ続けました。

 

これを契機に、私と両親の中は急速に悪化していきます。実はこれ以前にも、両親に行きたくもない都立高校の受験を強いられ、強制的に塾に入れられるということがあり(そしてその塾で、教師からいじめを受けるという経験をします)、余計に私は両親に対して反発していきました。当時の私にとって、両親は私が本当にやりたいことなど見向きもせず、ただ良い大学に入れさせることだけを考えている、そんな風に見えていたのです。

(今では、両親にそんなつもりはなかったと理解しています。両親は、両親なりに私のためを思って、努力してくれていました。ただ、”ありのままの子どもの姿”ではなく、”自分がそうであって欲しいと望む子どもの姿”だけを見ようとしてしまっていたのだと思います)

 

***

 

さて、私の夢と両親との関係性について、ここまで書いてきました。これらの話は、これから起こることの大きな背景となっていきます。

私にとって、その後の人生を左右するような”転機”が訪れたのは、それから少し経った高校2年生の夏のことでした。

 

つづく

 

《ルカ1章1〜4節》

12 私たちの間ですでに確信されている出来事については、初めからの目撃者で、みことばに仕える者となった人々が、私たちに伝えたそのとおりを、多くの人が記事にまとめて書き上げようと、すでに試みておりますので、  3 私も、すべてのことを初めから綿密に調べておりますから、あなたのために、順序を立てて書いて差し上げるのがよいと思います。尊敬するテオピロ殿。  4 それによって、すでに教えを受けられた事がらが正確な事実であることを、よくわかっていただきたいと存じます。